SELF-CARE DIALYSISセルフ透析

ABOUT
SELF-CARE DIALYSIS

自分で選び、
自分の手で管理する。

セルフ透析とは、透析の準備から穿刺、片付けまでを患者さんご自身が行う、施設内での血液透析です。医療機関の中で行いますが、機器を操作するのはスタッフではなく、患者さん本人です。

ここでは、実際に何をするのか、他の透析とどう違うのか、そして何が期待できるのかをご説明します。

01

What You Do

実際に、何をするのか

透析1回の流れは、おおむね次のようになります。

  1. 手洗い・体重測定
  2. 透析装置の準備(回路の組み立て、機器の設定)
  3. 穿刺(自分で針を刺す)
  4. 透析開始・透析中
  5. 抜針・止血
  6. 片付け

このうち、3の穿刺も含めて、すべてご自身で行います。

もちろん、いきなり一人で行うわけではありません。すべての工程について、できるようになるまで専任のトレーナーと一緒に練習します。一人で行うようになった後も、看護師と臨床工学技士が常にいる環境です。困ったとき、うまくいかないときに、その場で聞ける相手がいます。

トレーニングの進め方については、はじめ方 ─ トレーニングについてで詳しくご説明しています。

02

Why

なぜ、自分でやるのか

「なぜわざわざ自分でやるのか」と思われるかもしれません。理由は二つあります。

ひとつは、時間を自分で決められるようになるから

通常の透析は、スタッフの人員配置に合わせて曜日と時間が決まります。患者さんが自分で操作するセルフ透析では、その制約がなくなります。開院時間の中で、アプリを使ってご自身で席を予約します。仕事の予定に合わせて時間を動かすことも、旅行を前提に透析スケジュールを組み立てることもできます。

もうひとつは、透析の回数と時間を増やしやすくなるから

標準的な週3回4時間の透析では、健康な腎臓の働きに比べて十分な透析量とはいえません。回数や時間を増やすことが体調に関わることは以前から指摘されてきましたが、実際にそれを提供している施設は多くありません。自分で操作する形にすることで、この選択がとりやすくなります。

在宅血液透析とは違います

自分で操作する透析、というと在宅血液透析を思い浮かべる方もいると思います。手技の内容は近いのですが、自宅の設備工事も、介助者の確保も必要ありません。

詳しくは下の「三つの選択肢の違い」をご覧ください。

03

Three Options

三つの選択肢の違い

ここで比べるのは、施設透析・セルフ透析・在宅血液透析の三つです。

なぜこの三つを比べるのか

血液透析を続ける方法は、ひとつではありません。

多くの方が受けているのは、週3回・1回4時間、決まった曜日と時間に通う「施設透析」です。この形が広く定着しているのは、それが唯一の正解だからではなく、日本の透析医療がこの形を前提に組み立てられてきたからです。

もうひとつ、以前から存在するのが「在宅血液透析」です。自宅に装置を置き、患者さん自身が操作する方法で、透析の回数や時間を自分の生活に合わせて増やすことができます。ただし、自宅の設備工事や介助者の確保といった準備が必要で、実施できる方は限られてきました。

セルフ透析は、この二つの間にあります。操作を自分で行う点は在宅血液透析と同じですが、行う場所は自宅ではなく施設です。そのため、自宅の工事も介助者も必要ありません。看護師と臨床工学技士がいる環境で、自分のペースで透析を組み立てられます。

施設透析・セルフ透析・在宅血液透析の比較
施設透析セルフ透析在宅血液透析
行う場所医療機関医療機関患者本人の自宅
透析の実施医療スタッフ患者本人患者本人
穿刺(針を刺す)医療スタッフ患者本人患者本人
透析の回数週3回が標準週4回以上を推奨(多くの方が実践)自分で決められる
1回の時間4時間が標準自分で決められる自分で決められる
通院日時の決め方曜日・時間は固定患者本人が計画し、アプリで予約月一回の通院
自宅の設備工事不要不要必要(給排水・電気)
介助者不要不要原則必要
体調が変わったとき医療スタッフが対応医療スタッフが対応患者本人や介助者で対応
透析中の過ごし方ベッドで横になって過ごすリクライニングチェア。通話・個室も可自宅なので自由
はじめるまで特になし訓練(目安1〜3か月)自宅の準備+訓練
自己負担特定疾病療養受療証により月1〜2万円が上限同左同左

※ スタッフの見守りと支援に基づきます。

04

The Space

セルフ透析
行う場所

セルフ透析は、専用の環境で行います。

ベッドに横になる通常の透析とは異なり、リクライニングチェアを使います。座った姿勢でパソコン作業をすることも、少し倒してくつろぐこともできます。半個室のパーテーションがあり、他の患者さんの視線は気になりません。通話が必要な方のための個室もあります。全席で高速Wi-Fiが使えます。

読書でも、映画でも、仕事でも、眠っていても。
透析の時間を、生活から切り離された特別な時間にしないこと。
これがこの場所の考え方です。

セルフ透析センターの通路。左側にガラスの間仕切りで区切られた個室が並び、奥にリクライニングチェアとサイドテーブルが置かれている。
05

The Amount

HDP ──
透析量の考え方

透析の「量」という考え方

透析について語られるとき、多くの場合は「週何回、1回何時間」という話になります。
しかし患者さんの体にとって意味を持つのは、回数でも時間でもなく、
その組み合わせが生み出す透析の総量です。

これを数値で表そうとしたのが、HDP(Hemodialysis Product/透析量)という指標です。慢性血液透析の道を開いた Belding H. Scribner(ベルディング・H・スクリブナー)らが2002年に提唱しました。計算式は、次のようになります。

HDP = 1回の透析時間 × (1週間の透析回数)2

提唱者らは、この値が70を超えることを、適正な透析のひとつの目安としました。根拠になったのは、週3回・1回8時間の長時間透析(HDP 72)を続けた患者さんに良好な長期生存が報告されたことです。ここでは、この72を目安の数値として話を進めます。

いまの「週3回4時間」は、目安の半分です

日本で多くの方が受けている週3回・1回4時間を、この式に当てはめてみます。

4時間 × 3回2 = 36

目安である72の、ちょうど半分です。日本透析医学会のガイドラインは、週3回の血液透析について1回4時間以上の透析時間を推奨しています。4時間はあくまで下限であり、標準とされている形が十分な量だということではありません。

1回を長くするより、回数を増やす

もう一度、式を見てください。2乗されているのは回数のほうです。1回の時間を延ばすよりも、回数を1回増やすほうが、HDPは大きく伸びます。

これは体のはたらき方とも合っています。腎臓は24時間はたらき続けていますが、透析は間欠的です。透析と透析の間隔が空くほど、その間に体には老廃物や水分が溜まります。回数を増やして間隔を詰めることは、健康な腎臓のはたらき方に近づけることを意味します。

透析パターンごとの HDP
透析パターン週の総時間HDP
週3回 × 4時間いまの標準12時間4 × 3² = 36
週4回 × 4時間16時間4 × 4² = 64
週4回 × 4.5時間目安に到達18時間4.5 × 4² = 72
週5回 × 3時間15時間3 × 5² = 75
週5回 × 4時間20時間4 × 5² = 100

週3回を週4回にして、1回を30分だけ延ばす。それだけで36から72へ、二倍になります。回数を増やすというのは、透析漬けになることではありません。

日本のデータでも、HDPが高いほど死亡リスクは低い

これは計算上の話にとどまりません。日本透析医学会は、国内の透析患者のデータを使って、HDPと死亡リスクの関係を解析しています。週3回4時間(HDP 36)を基準にすると、次のような結果でした。

HDP と死亡リスク(日本透析医学会による国内データの解析)
HDP死亡リスク(調整ハザード比)
27〜351.21(基準より高い)
36(週3回 × 4時間)基準
37〜440.86
45〜710.70

※ 日本透析医学会 委員会報告「頻回・長時間透析の現状と展望」透析会誌 52(9):497〜531、2019。解析対象となった患者さんの67%が HDP 36(週3回・1回4時間)でした。なお HDP が72を超える群では有意な差は確認されていません。報告自身が、その群の患者数が少ないことを解析上の限界として挙げています。

週3回4時間(36)から、たとえば週4回4時間(64)へ。この範囲で、死亡リスクははっきりと下がっています。

回数を増やせない理由は、体の側にはありません

それなら増やせばいい、という話ですが、実際には簡単ではありません。決まった曜日の決まった時間に、週4回、5回と通う。働きながらこれを続けるのは、多くの方にとって現実的ではないからです。

セルフ透析週4回以上を前提にしているのは、ここに理由があります。曜日も時間も自分で決めてアプリで予約するので、回数を増やしても、生活のほうを組み替えずに済みます。

この指標をどう受け止めるか

Scribner らがこの指標を提唱した背景には、フランス・タッサンの透析施設で、長時間・頻回の透析を続けた患者さんに良好な生存成績が観察された、という事実があります。彼らはその観察をもとに、週4〜7回・1回5〜8時間という透析を推奨しました。

ただし HDP は経験的な指標であり、学術的に確立した絶対基準ではありません。「この数値を満たせば必ずこうなる」という保証ではなく、透析量を考えるための一つのものさしです。実際にどの程度の回数と時間が適切かは、患者さんそれぞれの体の状態によって変わります。必ず医師にご相談ください。

それでも、この指標には意味があります。「週3回4時間」を当たり前として受け入れるのではなく、自分が今どれだけの透析を受けているのかを数値で見られるようになるからです。

06

Outcomes

期待できること

01

透析をしながら、今まで通り働き続けられること

セルフ透析では、曜日も時間もご自身で決めて、アプリで席を予約します。
朝いちばんに済ませることも、仕事を終えた夜に受けることもできます。

透析中の時間も同じです。リクライニングチェアで座った姿勢のまま過ごせるので、パソコンを開いて作業ができます。
全席で高速Wi-Fiが使え、通話やWeb会議が必要な方のための個室もあります。
透析の時間を、仕事の時間として使うこともできます。

実際に、仕事を続けながら通われている方が多くいらっしゃいます。

02

透析以外の予定を、生活に組み込めるようになること

曜日と時間が決まっていると、予定のほうを透析に合わせるしかありません。
旅行も、習い事も、家族との約束も、透析の日を避けて組むことになります。

セルフ透析では、逆に透析のほうを動かせます。土曜に出かけたい週は、平日の夜に振り替える。
旅行に行くなら、その前後で組み直す。予定を諦めるかわりに、透析を組み替えるという選び方ができます。

実際に、登山やゴルフを続けている方、ご家族と海外旅行に出かける方、習い事に通われている方がいらっしゃいます。
透析のために、楽しみを手放す必要はありません。

03

水分・食事の厳しい制限が緩和されること

透析を受けている方にとって、食事と水分の制限は日常的な負担です。

十分な透析量を確保することで、標準的な透析と比べて食事制限が緩和されることが期待されます。

食事は、栄養を摂るための行為であると同時に、生活の楽しみでもあります。制限を必要以上に厳しくしないことは、栄養状態の維持という意味でも大切です。

04

合併症のリスクが軽減できること

透析を長く続けるなかで、血管の石灰化をはじめとする合併症は大きな課題です。

日本透析医学会の委員会報告は、「尿毒症物質の十分な除去と良好な体液コントロールは、合併症を減らし患者の QOL を改善する」と述べています。また、心不全の兆候、下がりにくい高血圧、続く高リン血症など、通常の透析では管理が難しいときには、透析の時間や回数を増やすことを考慮すべきだとしています。

日々の血圧変動や足のつりといった短期的なトラブルの解消と合わせて、長期的な合併症リスクの軽減が期待されます。

※ 日本透析医学会 委員会報告「頻回・長時間透析の現状と展望」透析会誌 52(9):497〜531、2019

05

治療を、自分のものとして引き受けられること

これは数値では表せないことですが、実際に最も大きく語られることでもあります。

自分の手で自分の治療を行うようになると、「管理される患者」から「自分の治療と生活をコントロールする側」へと、立ち位置が変わります。

自己穿刺は、始める前には最も怖いことです。ところが続けていくうちに、「自分の血管のことは自分がいちばんよく分かる」という感覚に変わっていきます。今日は穿刺の上手な担当者に当たるだろうか、という不安がなくなる。恐怖の対象だったことが、安心の根拠に変わる。この変化を経験される方は少なくありません。

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